登山中に足がつる経験をしたことがある方は多いでしょう。
特に長時間の登山や急な勾配を登る際には、足の筋肉が疲労しやすくなり、つりやすくなります。
しかし、適切な準備と対策を取ることで、足がつるリスクを大幅に減らすことができます。
この記事では、登山中に足がつる原因とその予防策について、看護師で登山歴6年の僕が詳しく解説します。
快適な登山を楽しむために、ぜひ参考にしてください。
登山中に足がつる原因
“つる”とは?
メカニズム
“つる”とは、足や手などの筋肉が伸縮バランスを崩してしまうことで、異常な収縮を起こし、元に戻らない状態をいいます。
通常、筋肉は大脳から発信された信号が脊椎中の神経系を通り、筋肉へと直結する末梢神経へ伝達されて初めて収縮運動をします。
しかし、時によってはその信号が筋肉内の一部にしか伝達されないため、その筋肉のみが過度に収縮するという異常な事態が引き起こされることがあります。
これが“つる”という現象のメカニズムになります。
この症状は、一度発生すると痛みが数分間続き、その後もしばらくの間筋肉が硬直したり痛みが残ったりします。
登山での頻発部位
“つる”現象は、特にふくらはぎや太ももで多く見られます。
ふくらはぎに起こるものを“こむら返り”とも言います。
その他にも、足の裏や足の指、肩や腕にもつりが発生することがあります。
足がつる原因
筋肉の疲労と電解質バランス
足がつる原因として最も一般的なのは筋肉の疲労と電解質バランスの乱れです。
長時間の登山で筋肉が疲労し、必要な電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)が不足すると、筋肉が正常に機能しなくなり、つりが発生します。
その他の原因
その他の影響要因としては、水分不足、冷え、運動不足、急激な寒暖差が挙げられます。
また、適切なウォーミングアップを怠ることや、過度なストレスも足がつる原因となることがあります。
登山中の足のつりを予防する方法
事前の予防方法
適切な装備
適切な登山装備は足のつりを予防するために非常に重要です。
特に、登山靴は足にフィットし、しっかりとサポートしてくれるものを選ぶことが大切です。
また、軽量で通気性の良い服装も、発汗による電解質の消失を最低限にするために重要です。
バランスの良い食事
足のつりを予防するためには、バランスの取れた食事が重要です。
特に、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルが不足しないように心掛けましょう。
これらの栄養素は筋肉の正常な収縮をサポートします。
ミネラルが豊富な食材としては、バナナ、ナッツ、野菜、乳製品などがあります。
これらを積極的に摂取することで、足のつりを予防できます。
登山前のウォーミングアップ
登山前のウォームアップは、筋肉をほぐし、足のつりを予防するために重要です。
軽いストレッチやジョギングなどを行うことで、筋肉の柔軟性を高め、血流を良くします。
これにより、登山中の筋肉の疲労を軽減できます。
登山中の予防方法
定期的な休憩
登山中は、定期的に休憩を取ることが重要です。
特に長時間の登山では、無理をせずに適度に休むことで、筋肉の疲労を防ぎ、足がつるリスクを低減できます。
10分程度の休憩を1時間ごとに取るのが理想的です。
水分と電解質の摂取
登山中は、適切に水分摂取量をすることが大切です。
一般的には1時間ごとに200〜300mlの水分を摂取するのが目安です。
また、水分補給において、電解質の補充も重要になります。
汗をかくことでナトリウムやカリウム、マグネシウムなどの電解質が失われるため、スポーツドリンクや塩タブレットなどを利用して補給しましょう。
これにより、筋肉の正常な機能を維持できるとともに、足がつるのを予防出来ます。
気温や運動量に応じて摂取量を調整し、脱水症状を防ぎましょう。
正しい歩行姿勢
正しい歩行姿勢も足のつりを防ぐために重要です。
背筋を伸ばし、足全体を使って歩くことで、筋肉の負担を均等に分散させることができます。
また、急な登りや下りでは、ペースを落として歩くことが重要です。
日常でできる“つる”のを予防するストレッチと運動
足のつりを防ぐストレッチ
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎのストレッチは、足がつるのを防ぐために非常に効果的です。
壁に手をつき、一方の足を後方に伸ばし、前方の足を軽く曲げます。
この姿勢を30秒間キープし、反対側の足でも同じように行います。
太もものストレッチ
太もものストレッチも重要です。
立った状態で、片足を後方に引き、足首を掴んでかかとをお尻に近づけます。
この姿勢を30秒間キープし、反対側の足でも同様に行います。
これにより、太ももの筋肉がほぐれ、足がつるリスクが減少します。
足の筋力を高める運動
スクワット
スクワットは足の筋力を高めるための効果的なエクササイズです。足
を肩幅に広げ、膝を曲げて腰を落とし、再び立ち上がります。
この動作を10回1セットとして、3セット行います。
これにより、足全体の筋力が強化されます。
カーフレイズ
カーフレイズも足の筋力を高めるために効果的です。
まっすぐに立ち、つま先立ちになり、その後元の位置に戻ります。
この動作を20回1セットとして、3セット行います。
特にふくらはぎの筋力が強化され、足がつるのを予防できます。
登山中に足がつった時の対処法
応急処置の方法
ストレッチ法
登山中に足がつった場合、まずはストレッチを行いましょう。
足を伸ばし、つった筋肉を軽く引っ張るようにストレッチします。
例えば、ふくらはぎがつった場合は、つま先を手で掴み、ゆっくりと引っ張ります。
マッサージ法
ストレッチに加え、マッサージも効果的です。
つった部分を手で優しく揉みほぐし、血流を促進します。
ふくらはぎがつった場合は、両手でふくらはぎを包み込むようにして、下から上に向かってマッサージします。
休息と水分補給と薬剤の使用
水分補給
足がつった際には、適切な水分補給が重要です。
汗をかくことで体内の水分と電解質が失われているため、足がつった時は、スポーツドリンクや塩タブレットなどで電解質を補給しましょう。
休息の確保
足がつった際には、無理をせずに休むことが大切です。
筋肉が回復する時間を確保するために、10分から15分程度の休憩を取り、足を高くしてリラックスします。
これにより、再び登山を続ける際の筋肉の負担を軽減できます。
薬剤の使用
長年登山をしている人の中には芍薬甘草湯を飲んでいる人も多いです。
甘草湯は筋肉の急激なけいれんを伴う痛みのあるものに対して効果があり、こむらがえり、筋肉のけいれん、腹痛、腰痛などに効果があります。
アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症のある人には禁忌となっているため、それらのある人は飲んではいけません。
足をつった時には芍薬甘草湯を内服するとすぐに効果が出るため、お守りとして持っておくことをオススメします。
まとめ
登山中に足がつる問題は、多くの登山者が直面する課題です。
しかし、適切な対策を取ることで予防可能です。
まず、登山前の準備として適切な装備を整え、ウォームアップを行うことが重要です。
登山中は定期的な休憩と正しい歩行姿勢を心掛け、筋肉の疲労を防ぎましょう。
また、足のつりを予防するためのストレッチや運動も日常的に行うことが大切です。
さらに、バランスの取れた食事と適切な水分補給を心掛けることで、足がつるリスクを大幅に減らすことができます。
登山中に足がつった場合は、速やかにストレッチとマッサージを行い、適切な休息と水分補給、芍薬甘草湯の内服をすることで、症状を和らげることができます。
これらの対策を実践することで、快適な登山を楽しむことができるでしょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。