ケトン体回路を働かせたケトジェニックを知っていますか?
ケトン体回路が働いた状態で登山ができるようになると、シャリバテ(低血糖)を起こしにくくなり、バテにくくなります。
僕は登山歴6年の看護師で、ケトン体回路を働かせた状態で登山ができるようになったことで、シャリバテ(低血糖)を起こしにくくなり、空腹でも歩ける時間が長くなったとともに、より少ない食料で登山ができるようになりました。
この記事では、生理学を学んできた看護師がケトン体回路の基本から、登山と組み合わせ方、食事計画までを詳しく解説していきます。
ケトン体回路とは?基本の理解
ケトン体回路の仕組み
ケトン体の生成過程
ケトン体は、肝臓で脂肪が分解される過程で生成されるエネルギー源です。
通常、体は炭水化物をエネルギー源としますが、炭水化物の摂取が制限されると、脂肪が代わりに使われます。
このとき、肝臓で脂肪が分解され、ケトン体が生成されます。
これがケトン体回路の基本的な仕組みです。
ケトン体とエネルギー代謝
ケトン体は、脳や筋肉にとって優れたエネルギー源です。
グルコースが不足している状況でも、ケトン体を利用することで、エネルギーの供給が途絶えないようになります。
一旦ケトン体回路が働くと、作られたケトン体はあらゆる細胞でエネルギーとして使われはじめます。
あえて糖質を摂らず枯渇した状態にしておくと、代わりにエネルギーとなるケトン体を供給しなければならないので、ケトン体回路が活発に回り始めます。
この状態をケトジェニックと言います。
ケトン体は、グルコースよりも効率的にエネルギーを供給できるため、持久力や集中力が向上するというメリットがあります。
登山中のケトン体回路のメリットとデメリット
ケトン体回路のメリット
ケトン体回路のメリットには、脂肪燃焼の促進、エネルギー供給の効率化、集中力の向上、持久力の向上などがあります。
特に、脂肪燃焼が促進されることで、体脂肪の減少が期待でき、ダイエット効果も得られます。
また、ケトン体がエネルギー源となることで、血糖値の急激な変動が抑えられ、安定したエネルギー供給が可能になります。
登山ではカロリーを大きく消費し、こまめにカロリー摂取をする必要があるますが、ケトン体回路が上手く働いているとあまり食べなくても登れるようになります。
昔は僕も糖質のカロリーに頼って山を登っていましたが、現在はあまり食べなくても山を登れるようになりました。
多少空腹を感じてもあまりバテることはありません。
ケトン体回路のリスク
一方で、ケトン体回路にはデメリットも存在します。
炭水化物の摂取が極端に少ないと、ケトアシドーシスという状態になるリスクがあります。
これは、体内のケトン体が過剰に生成され、血液が酸性に傾く状態です。
また、ケトン体回路に慣れるまでには時間がかかり、初期段階では疲労感や集中力の低下を感じることがあります。
登山では他にも、ケトン体回路だけではエネルギー供給が追いつかなく、バテることもあります。
そのため、ケトン体回路だけに頼った登山は控え、エネルギー供給源として、糖質とケトン体を上手く切り替えながら登れるよう体づくりをすることが大切です。
登山とケトン体回路の関係性
登山中にケトン体回路が働く仕組み
高負荷運動とケトン体の関係
登山は高負荷の運動であり、エネルギーの消費が激しい運動です。
炭水化物が不足すると、体は脂肪をエネルギー源として利用し、ケトン体が生成されます。
これにより、長時間の登山でもエネルギー切れを防ぎ、持久力を維持することが可能です。
ケトン体回路が上手く働かないと、シャリバテ(低血糖)を起こします。
登山でケトン体回路を働かせるには、ケトジェニックになりやすいように体を慣らしておく必要があります。
登山中の体内変化
登山中は、酸素供給が限られる状況で筋肉が働き続けるため、エネルギー代謝が重要になります。
ケトン体を利用することで、筋肉のエネルギー供給が安定し、疲労感を軽減する効果があります。
また、ケトン体が脳のエネルギー源となるため、高度での酸素不足による集中力の低下も防げます。
登山におけるケトン体回路の効果
持久力向上
ケトン体回路は、持久力向上に寄与します。
ケトン体は、筋肉にとって効率的なエネルギー源であり、長時間の運動でもエネルギー切れを防ぎます。
これにより、登山中の持久力が向上し、より長時間、安定したペースで登山を続けることが可能になります。
疲労回復
ケトン体は、疲労回復にも効果があります。
運動後の疲労感を軽減し、回復を早める作用があるため、連日の登山でも体力を維持しやすくなります。
特に、ケトン体を利用することで、筋肉のエネルギー供給が安定し、回復が促進されます。
ケトン体回路を使えるようにするための体づくり
ケトン体回路を使えるようになるにはある程度慣れが必要になります。
登山でケトン体回路をある程度使えるようにするには、登山前から練習しておくと良いでしょう。
方法を以下に解説していきます。
有酸素運動
ケトン体回路を働かせるには有酸素運動が最もおすすめです。
空腹時の有酸素運動などのゆっくりとした運動はケトン体が出やすくなります。
一方、心拍数が上がる激しい運動をすると交感神経が刺激されて、ブドウ糖をエネルギーとする「グルコジェニックモード」になりやすくなります。
空腹時にヨガやウォーキング、ジョギングなどを行うと良いでしょう。
僕は早朝にウォーキングやジョギングをしています。
ケトン体回路を働かせることができると空腹時の方が体が軽く感じ、長時間運動してもバテることがありません。
食事法
ケトン体回路をサポートする食事法では、高脂質・高タンパク低炭水化物の食材が重要です。
具体的には、アボカド、ナッツ、オリーブオイル、ココナッツオイル、脂肪分の多い魚や肉が挙げられます。
これらの食品は、ケトン体の生成を促進し、安定したエネルギー供給を可能にします。
この中でも、中鎖脂肪酸であるココナッツオイル(MCT)が良いとされています。
通常、脂肪の消化・吸収は三大栄養素(糖質、タンパク質、脂質)の中で一番遅いものですが、ココナッツオイルはすぐに腸内で吸収され、肝臓にまわってケトン体を生成するため、糖質を摂っていない状態であればケトン体回路が働き始めます。
ケトン体回路が働いている時は、糖新生も同時に体内で起こっています。
糖新生とは、筋肉を分解してアミノ酸にしてそれを糖に変換してエネルギーにするものです。
糖新生が起こっていると筋肉が減ってしまうため、積極的にタンパク質を摂って消化してアミノ酸を体に供給する必要があります。
タンパク質を摂るために、具体的には肉や魚、乳製品や卵を積極的に食べるようにしましょう。
肉や魚などのタンパク質をたくさん摂るのが大変だと思う方は、プロテインを摂取すると手間も金額も抑えることができます。
僕はこれら上記二つの製品を積極的に摂取してケトン体回路を働かせています。
低炭水化物食に慣れるには、時間をかけて徐々に減らしていく必要があり、急激に減らすと、ケトン体回路や糖新生がうまく働かず低血糖を起こす可能性があるため注意が必要です。
僕は元々朝食はガッツリと食べる派でしたが、朝食をココナッツオイルとナッツとお茶だけにするなどして徐々に空腹に慣れるようにしていきました。
ケトン体回路の登山での応用
登山での食事計画
普段からでケトン体回路がうまく働くようになってきたら登山にも導入していきます。
ケトン体回路だけに頼った登山ではバテて動けなるリスクもあるため、徐々に糖質を減らしてタンパク質や脂質を増やしていきます。
ケトン体回路が働くようになった体では、今までよりも少ない食料で山を登れるようになっているはずです。
高脂質・高タンパク低糖質食はカロリーの割には結構かさばり、重量も増えがちになるため、登山前に多く摂るのがポイントです。
登山前の食事のポイント
登山前の食事では、エネルギー供給を安定させるために、高脂質・高タンパク低炭水化物の食品を摂取します。
例えば、ココナッツオイル、ナッツやチーズ、プロテインなどがあります。
タンパク質や脂質は消化・吸収に時間がかかるため、起床後早めに摂取するようにしましょう。
糖質のエネルギーとハイブリッドで動く場合、登山口到着30分前くらいには米やパンなどを食べておくと登山のスタートから糖質のエネルギーも利用できます。
糖質が切れてきたころにケトン体回路が働いてきます。
僕は朝に糖質ばかり摂取すると、登山でエネルギーが切れた時にケトン体回路が上手く機能せず、一気にシャリバテ(低血糖)を起こすので、多様性を持って食事を摂ることが大切だと思っています。
登山中の食事のポイント
登山中は適宜エネルギーの摂取が必要ですが、脂質やタンパク質をメインに摂取します。
プロテインバーやナッツ、チーズなどをこまめに摂取します。
脂質やタンパク質は消化・吸収に時間がかかるため、早めの摂取を心がけることが重要です。
満腹になると消化器への負担も大きく、消化を終えて体内の脂肪を燃やすケトジェニックモードになかなかなることができないため、一気に食べ過ぎず少しずつ食べることが重要です。
登山時の注意点
ケトン体回路だけに頼るのは危険
高脂質低炭水化物の食事を摂ることで、ケトン体回路を働かせてエネルギー供給を安定させることができます。
しかし、ケトン体回路で使える体内の脂肪にも限りがあります。
人によってはケトン体回路が上手く機能しないこともあるでしょう。
その場合、シャリバテ(低血糖)を起こし、行動不能に陥る可能性もあります。
そのため、保険としてある程度糖質の入っている食料も持っていくことが大切です。
吸収も早く電解質や水分も入っていてカロリーもあるゼリー系飲料がオススメです。
コースに合わせて行動食の選択が必要
ケトン体回路は激しい運動の時には供給が追いつかなくなることがあります。
登山では、激しい急登でエネルギー切れを起こしやすいです。
緩やかな登りではケトン体回路頼りでの行動で問題ありませんが、激しい急登前にはバテを防ぐため、糖質を事前に摂っておく方が良いでしょう。
まとめ
ケトン体回路を働かせながらの登山は、体内の脂肪を有効に利用できるため通常よりも少ない食事で登山ができるようになります。
はじめは徐々に炭水化物の摂取を減らし、高脂質・高タンパクの食品を増やしたり、空腹に慣れることから始めましょう。
登山時にはエネルギー切れなどによる遭難のリスクも考えて準備をし、徐々にケトン体回路を働かせながら登れる練習をしていきましょう。